四谷の法律事務所 | 水島法律事務所

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良い弁護士とは

○良い弁護士と良くない弁護士/弁護士の正しい見分け方
―ネット検索に異議あり


弁護士は、予て人の紹介で業を成り立たせてきたが、インターネット文化が世に普及拡大して、今やそのビジネスモデルは大きく変容を強いられている。しかし、実は、その簡便さの裏に大きな落とし穴がある。


世の中の弁護士検索ツールは、弁護士を「得意分野」と料金で分類して、弁護士側はその情報を発信し、依頼者側はその「得意分野」と料金で弁護士を選別する仕組みになっている。しかし、弁護士の仕事(その良し悪しや価値)をその2つで判断するというのは、余りにも表面的で乱暴に過ぎ、リスクが多すぎる。


まず、その情報発信は一方的な触れ込み(広告)でしかないし、ものの見方としても、「専門としているから優れている」とは必ずしも言えないからである。


  (1)そもそも、弁護士の活動は、分野の如何を言う前に、「事件処理」の能力や姿勢がより重要である。事件とは人と人の争いであり、人の争いは別に法の分野毎に構造が異なるものではない(その証拠に、裁判上の争いは多くが事実関係を巡るもので、争いが特定の法解釈に限られるような事件は希有である。また、仮に、その法解釈問題に基本法を超えた専門性があったところで、弁護士の基礎的能力があれば、調べて対応すれば足りることである)。


従って、弁護士は、特殊な法分野(外国法を扱う渉外事件や、例えば知的財産権等、その法理自体に特殊性がある事件)を除いて、民事刑事のいわゆる基本法の範囲では、特に取り扱う分野を限定せずに幅広く活動しているのが一般で、取扱分野を限定すばそれで弁護士として高い能力や評価が得られているという実態はない。

  (2)元々、弁護士は、訴訟の代理人等紛争の処理活動(これを事件処理という)を独占的に業とすることが制度上認められた資格で、本来はその事件処理をこそ得意とすべき職業なのである。


事件処理には、訴訟法に則った裁判の法廷活動(攻撃防御)もあり、訴訟前の示談交渉もあり、和解解決もあって、その活動は多種多様であり、係争一本槍ではない。「相手のあること」(相手の動き次第で対応せざるを得ず、こちらの自由にはならないこと)であり、攻撃防御で形勢に変動がある中で、都度その事件・依頼者にとってどういう解決が望ましいか、そのゴールを見極めて、多方面で知恵と創意工夫を凝らす創造的な仕事である。


闘う為には、誤魔化しを見抜いて真の問題の所在を分析把握する能力、ゴールを見通して攻撃防御方法を適切に選択して組み立てる能力、仕事の緻密さ丁寧さ、証拠を的確に収集する能力等が必要であり、紛争を収める為には、より大局的な価値観(バランス感覚)や、説得力が必要である。つまり、その仕事は決して事務仕事ではない。


そして、世の中の係争事件は、一過性のものより、歴史を背負っていて、各方面に展開して多面化しているものが多く、決して一面的ではない。


従って、その紛争を解決する為には、むしろ、多種多様な「引き出し」を持って、多面的に柔軟に考察対処することが必要で、その意味で、弁護士は、古来、基本的にオールラウンドに対応できる資質や能力が必要だと教育され訓練されてきた。

  (3)ところが、近時、制度改正で法曹人口が強引に大増員された結果として、法曹の資質の低下事務仕事化パターン化マニュアル化=上記の事件処理能力の低下)がもの凄い勢いで進んでいる。消費者金融の過払金返還請求事件のように、利息制限法の元本充当計算のソフトさえ購入取得すれば誰でも簡単にできる事務仕事を、弁護士が好んで「専門分野」と称し、自らをその事務仕事に特化して、逆に、それ以外の本来の事件処理能力を疎かにし、苦手にして、面倒な事務処理は避けて通る、或いは途中で無責任に放り出すような弁護士が増えているのである。

「専門分野」とか「得意分野」と言うと一見聞こえはいいが、前述したように、特殊な法分野なら兎も角、民事刑事の基本法の範囲に属する事柄(ex.借金問題や離婚等)で、得意や不得意を作る方がむしろ問題で、その弁護士が肝心の基本的な能力分野で不勉強な結果である疑いがある。

  (4)つまり、残念なことであるが、弁護士は、最早、「古き良き時代」と異なって、「誰でも頼って間違いはない」資格ではない。弁護士選びは、弁護士を探す者が、その期待する中身内容にまで立ち入って、その現実をよく見極めないと、痛い目に遭いかねない、注意を要する、難しい問題になってきているのである。

  (5)借金問題の「法律相談無料」合戦や、ネット検索分野の料金のダンピング合戦も、同じように、昨今の弁護士の質の低下や事務仕事化と強く関連した事柄だと言える。


予ては弁護士会の報酬規程なるものが厳然と存在し、それが料金の公正化に大きく役立っていた。しかし、それが「規制緩和」の時流で廃止され、弁護士の大量増員と相俟って、悪しき反射的効果を生んでいる。これは何も弁護士の世界に限ったことではないが、安さ競争(安さを競わせる選び方)の顛末が「安かろう、悪かろう」に終わることは、双方が警戒していかなければならないことである。

弁護士を、ネットショッピングの感覚で選んではいけない。弁護士は、規格や品質に変動がない規格品(ハード)ではなく、その中身(ソフト)の良し悪しこそが重要な職業なのである。



○本当に良い弁護士とは


然らば、良い弁護士とは、一体どういう弁護士なのか。結論から先に言えば、それは、依頼者側の係争の姿勢やニーズ、更にはその性格等によって大きく異なってくる。その理由は、次の通り。



a 事件処理能力のレベル


前述したように、弁護士の能力は基本的に事件処理の能力で判断されるから、まず、それが疑われるような弁護士は避けた方がいい(例えば、強気に結論で係争姿勢を誇示するだけで、その理由付け根拠付けには労を払わず、相手や裁判所に見下される弁護士等)。


事件処理の方向は、大きく言って攻撃防御本位の闘争型と和解折衝型に分かれる。そして、多くの弁護士は、事案の内容や形勢によって、その二つを上手く使い分けているのだが、どちらかを苦手とする人もいる。概して言えばの話であるが、前述した基礎的能力の低下した弁護士は、何でも一方的に書面をファックスで送りつける等係争姿勢一本槍で、示談折衝や和解は苦手にしている者が多い(いわゆる出口戦略がなく、結果に対して無責任となる)。



b 事件処理の姿勢


次に、それと同等に重要な意味を持つのが、その弁護士の事件処理の姿勢である。例えば、弁護士には、正義感責任感が強く、闘いも正攻法を好んで、労を厭わず、姑息で不公正なやり方を嫌うタイプもいるし、逆に、嘘も誤魔化しも方便と、姑息なやり方に終始するタイプもいる。

それは、まずはその弁護士の性格を現しているのだが、実はそれだけではなく、依頼者側の要求と、事件そのものが持っている宿命にも左右されている面がある。業界の「教訓」の一つに言われてきたことであるが、弁護士という仕事は、「勝つべき事件を正々堂々と闘って勝つのは当たり前。しかし、勝ち目のない事件を正々堂々と負ける程馬鹿なことはない」仕事なのである。


その意味で、弁護士と依頼者は、互いに需要と供給で結び付く存在、依存し合う存在で、争う姿勢云々はそのパートナーシップの産物に外ならない。従って、依頼者側は、その意味でまず自分自身を把握し、自分と自分の事件に合ったタイプの弁護士を選ぶべきなのである。


私は、ある程度の職歴を重ねた段階で、自分の性格や係争の姿勢を好んでくれる、自分と性が合った依頼者層に囲まれているという実感、弁護士はそういう面で自ずと選ばれているんだなという実感を持った。そして、弁護士は、上記の係争姿勢や係争哲学で自分の個性的能力を磨けばよく、下手に媚びて(お金の為に)八方美人になるべきではないと思うようになった。



c 行き着くところは信頼関係


裁判にしろ、調停にしろ、法手続には時間がかかる。お互いが攻撃防御を重ねる中で、真実が見えてくるには、それなりの時間がかかるというのが根本的な理由だが、その期間は1年2年はざらで、控訴上告まで続くと3年4年という大事件も珍しくない。そして、その間は、基本的に攻撃防御の繰り返しで、形勢の有利不利は微妙に変動する、ある種の「逆境」であり、その間には依頼者を取り巻く環境も大きく変化したりする。


従って、係争の心理的負担にはかなりのものがあり、当事者の心理状態は一定ではない。その為、弁護士は、医者と同じように、適宜カウンセラーの役割も務めることになるが、そうした波風にも拘わらず、そこで良好な依頼関係を長期に維持するには、両者間に人間としての基本的な信頼関係が必要不可欠である。


つまり、弁護士は相応に「信頼できる人」でなければならないが、同じことは依頼者側にも言える。

その点で、弁護士にとって望ましくない依頼者のタイプとは、例えば、その係争で自分が置かれた状況を弁(わきま)えず、勝って当然だと考えている人、弁護士の知的労力や創意工夫の成果を理解せず、代金や結果だけで弁護士を評価する人、最初は弁護士の仕事姿勢に感謝していても、いつしかそれが当たり前になり、いざ紛争が終結する段になると、その紛争解決の利益を見ないで、報酬の減額ばかりを言う人、等々である。



○弁護士探しは、具体的にどうしたらよいのか


以上に述べてきた観点から、弁護士選びに直に参考になるのは、やはり依頼経験者の経験談であろう。仮に、貴方が体の具合を悪くして、身近に良い医者を必要とした場合、やはりまずは周囲に受診経験者を探して、その医者の評判を聞いて回るのではないだろうか。


仮に、周りに適切な経験者や情報提供者が見つからず、インターネットの情報しかない場合には、入口はその情報から入らざるを得ないだろうが、大事なことは、そのネット上の情報は、候補者を選ぶに止めて、実際には必ずその候補者弁護士に直接法律相談に行ってみることである。


法律相談は、殆どの弁護士が「30分当たり5000円」の料金で受けている。実際に弁護士に会って、抱えた事件の処理方法を尋ね、上記の諸観点から必要なやり取りをすれば、その弁護士が自分の必要とする弁護士か否かは殆どその場で判断できるから、この方法と手順が最も有効である。


ネット上で、弁護士選びのハウツーを言う者の中には、その作業をメールで行えばよい。つまり、メールで一様に相談をぶつけて、それにどれだけ敏速に反応してくれたかで、弁護士のサービス度を判断すればよいと指南する者もいるが、これはやはり弁護士選びの内容を正しく理解した意見とは言えない。むしろ、間違ったアドバイスに属する。


メールは、自分本位の一方的な意思表示で成り立つもので、交互性に欠け(表現力に欠ける場合、自分に不都合なことは言わない場合、特にそうである)、コミュニケーションの効果は、電話にも劣り、実際に顔と顔を合わせた面談に比べると比べものにならない程限られるし(従って、仮に弁護士がメールで答えても、内容の半分は深みのない一般論で終わると思われる)、そのように自分本位に答えを迫る姿勢は、相手に対して失礼で、相手の不信を買う行動でもある。


つまり、真に、良い弁護士を選ぶ為には、選ぶ側もその為に相応の努力を払うべきであって、そのように自分では足も運ばず、簡便な手段で弁護士を選ぼうとする姿勢自体が安直に過ぎる。そのような安直な姿勢では、よいパートナーシップは得られず、逆に、表面的にはサービス熱心でも肝心の中身には乏しい弁護士に行き会うのが関の山である。

プロフィール

1949年生
【学歴】
新宿区立富久小学校
新宿区立大久保中学校
都立戸山高校
国立東京大学(法学部)

【著書】
「究極の相続対策」、「土地家屋の法律知識」、「損害賠償の法律知識」、「山スキー・ルート図集TU」

【趣味】
   かつては、山の会で山スキー(冬山)に熱中し、越後や会津の豪雪の山を登り、スキーで滑り降りた。基礎スキーは、司法試験の受験を解放された冬から始め、1級を取得後、山スキーを中に挟んで、指導員受験に巻き込まれ、正指導員の資格まで取って、スキークラブで指導活動をしていた。
   体力が落ちた今は、上記の延長で基礎スキーを続けているのと、気分転換のゴルフ、そして、山歩きと、花見(桜)である。気分転換のパターンは、「雪が降ったらスキー、桜が咲いたらゴルフ」でほぼ固まっている。そして、ゴルフを除く3つでは、できるだけ妻と行動を共にして、第二の人生が充実するように心掛けている。

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